「人を雇用する中小企業の経営者様」に知ってただきたい労働・社会保険法に関する情報を、ブログでお伝えしています。
おひさま社会保険労務士事務所代表の篠田 恭子です。
先日このような記事を書きました。
この記事の中で、最低賃金の改定までの流れが
1.中央最低賃金審議会が引上げ額の目安を示す(7月)
↓
2.各都道府県の地方最低賃金審議会での地域の実情を踏まえた審議・答申
↓
3.異議申出に関する手続き
↓
4.都道府県労働局長により決定される
という仕組みであるとお伝えしました。
引上げ額の目安より、最低賃金を引き上げる動き
2.各都道府県の地方最低賃金審議会での地域の実情を踏まえた審議・答申
最低賃金、目安額超え23県 近隣県より低い印象を回避 朝日新聞デジタル
2018年度の最低賃金(時給)の改定額が10日、全都道府県で出そろった。厚生労働省の審議会が7月に示した目安を超える引き上げ額で決着した地域が23県に上り、前年度の4県から大幅に増えた。人手不足のなか、人材確保のために賃金水準が見劣りしないよう、近隣県を意識して目安額よりも引き上げる動きが広がったとみられる。
今年は、目安を超える引き上げをした地域が23県にのぼったというニュースです。(昨年は4県のみ)
どの企業も人手不足が問題となっている昨今。
他県への人材流出を防ぐためにも、周りを気にする必要が出てくるのですね。それだけ人材不足が深刻化していることを感じます。
山形で異議申し立て
3.異議申出に関する手続き
答申の後の異議申立の手続き。山形県では、目安額が762円のところ、答申で1円上乗せし、最低賃金が763円になる見込みでした。
この763円に対して異議申し立てがありました。
山形県最低賃金額めぐり異議申出書を提出 22日に再審議 – 産経ニュースによれば
山形地方最低賃金審議会(山上朗会長)が山形県の最低賃金を763円とした答申に対し、県労働組合総連合(勝見忍議長)と県医療労働組合連合会(渡辺勇仁執行委員長)は20日、県の最低賃金の再審議を求める異議申出書を山形労働局に提出した。
異議申出書では、答申された最低賃金額(時間給763円)では、健康で文化的な最低限度の生活はできず、最高額の東京都(985円)と本県の差は222円もあり、これが若年層をはじめ労働力の県外流出に拍車をかける一因になっていると指摘している。
という内容になっています。
最低賃金は都道府県によって定められていますので、地域格差があります。
2018年10月から答申の結果、
1位が東京都 958円 → 985円(+27円)
2位が神奈川県 956円 → 983円(+27円)
いちばん低い県が
鹿児島県 737円 → 761円(+24円)
となる見込み。
異議申し立てのあった山形については、
739 → 763円(+24円)
で、最低賃金は低めの地域です。
この見込み額が採用された場合、2018年10月から最低賃金で1日8時間働くと
東京:985円/時給 × 8時間 = 7,880円
鹿児島:761円/時給 × 8時間 = 6,088円
その差、1,792円/日。
1月を20日間勤務するということで仮に計算してみると、1月 35,840円の差になるという計算になります。
健康で文化的な最低限度の生活には、いくらかかるのか?
地方にいると都市で暮らすよりもお金がかからないのか?
ご参考までに、標準生計費のデータを抜粋してみました。
標準生計費は、人事院が国家公務員の給与を決めるため、「家計調査」(総務省)等に基づき、費目別、世帯人員別に「国民一般の標準的な生活の水準」を算定しているものです。
労政時報 全国都市別・世帯人員別標準生計費 2017年4月より
単身世帯 2017年4月
山形市 109,790円
さいたま市 160,080円
東京都 147,400円
横浜市 136,900円
鹿児島市 150,880円
全国 116,560円
3人世帯 2017年4月
山形市 181,980円
さいたま市 282,250円
東京都 250,490円
横浜市 232,720円
鹿児島市 177,300円
全国 199,250円
このデータを見ると都市部と地方で生計費の差がありますが
全労連は、全国どこでも22~24万円(時給1,500円程度)が必要で、全国どこでも大きな格差は存在しない。
と反論しています。
再審議の結果
異議申立について、8月22日に山形地方最低賃金審議会で再審議が行われました。
結果は・・・
再審議するも、答申通りで一致。
ということで、763円に決まっています。
再審議も答申通りで一致 山形地方最低賃金審議会、10月1日から時給763円に – 産経ニュース
「最低賃金については専門部会でしっかりと議論し多数決で決めたので、異議申出書は却下が妥当」とし、使用者側は、丹哲人・県経営者協会専務理事が「異議申出書は制度的なものも内包していてわれわれの力では無理だ。専門部会で真摯に話し合い、採決では反対してきたが、決定されたことを覆す理由はない」と述べ、労使ともに答申に対する主張は一致した。
賃金やお給料を上げるということは、人件費の上昇につながり、企業の負担が大きくなります。
全国一律で最低賃金を1000円にしたとすると、人件費が上昇した分、人員を削減する動きになり従業員さんにもしわ寄せが来る懸念もあります。
賃金が上がるなら今まで以上に従業員さん1人1人の生産性が上がらないといけない。
そのためには従業員さんのスキルアップ、業務見直しや、AIの導入、アウトソーシング・・・あらゆる角度から対策をしていくしかないのでしょうね。
埼玉県川越市で開業している「あなたの、はた「楽」をサポート」する社会保険労務士です。
元リケジョであり、IT業界から社会保険労務士に転身した、ちょっと異色の経歴をもつ社労士です。
プライベートでは3男児の母になり、会社員時代に産休・育休・時短勤務も身をもって経験済。市内保育園に10年以上お世話になっています・・・
働く時間は人生の3分の1ともいわれます。
社長さんも従業員さんも、働くすべての人に楽しい仕事人生を送ってほしいという思いから、社会保険労務士になりました。
現在は社労士業である労務管理と合わせて、人事制度・賃金制度を中心とした制度作り、採用育成に関するコンサルティングを行っています。
中小企業の身近なアドバイザーとして、よりよい職場づくりを応援しています。