「人を雇用する中小企業の経営者様」に知ってただきたい労働・社会保険法に関する情報を、ブログでお伝えしています。
おひさま社会保険労務士事務所代表の篠田 恭子です。
ここのところニュースで取り上げられていますが、国や地方公共団体が「障害者雇用率を水増ししていた」ことが次々に明らかになってきました。
国は長年にわたって対象外の職員を算入し、雇用率を達成していたかのように、虚偽の数字を発表していたそうです。
今回は、この障害者雇用率について取り上げてみたいと思います。
障害者雇用率、根拠となる法律は「障害者の雇用の促進等に関する法律」、略称「障害者雇用促進法」です。
障害者に対する差別の禁止や、障害者が職場で働けるようにするための事業主の責務・配慮等について定められている法律です。
障害者雇用促進法 第43条 一般事業主の雇用義務等
事業主(常時雇用する労働者(以下単に「労働者」という。)を雇用する事業主をいい、国及び地方公共団体を除く。次章を除き、以下同じ。)は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。第46条第1項において「法定雇用障害者数」という。)以上であるようにしなければならない。
この条文で、事業主に対し、従業員の一定割合以上の身体・知的障害者の雇用を義務付ける制度が定められています。
この制度を障害者雇用率制度、障害者を雇用しなければならない割合のことを法定雇用率と言います。
現在、法定雇用率がどれくらいかというと、ちょうど今年、2018年(平成30年)4月1日から上がっていまして、下記の通り。
事業主区分 | 法定雇用率 |
---|---|
民間企業 | 2.0% ⇒ 2.2% |
国、地方公共団体等 | 2.3% ⇒ 2.5% |
都道府県等の教育委員会 | 2.2% ⇒ 2.4% |
民間企業よりも国・地方公共団体、都道府県の教育委員会の法定雇用率のほうが高くなっています。
対象となる民間企業の事業主の範囲
対象となる民間企業の事業主の範囲は、従業員が45.5人以上の企業です。
対象の企業には
- 毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければなりません。
- 障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めなければ
なりません。
という義務が課されます。
さらなる法定雇用率の引き上げ
平成33年4月までには、更に0.1%引き上げとなり、民間企業の法定雇用率は2.3%になる予定です。
この法定雇用率を守らなかった場合には納付金を納付しなければならないことになっています。
(常用労働者100人超の企業が対象)
障害者雇用納付金制度
常用労働者100人超の企業の場合
→未達成の事業主は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて、1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付しなければならない
※200人以下の事業主については、平成27年4月1日から平成32年3月31日まで障害者雇用納付金の減額特例あり
この納付金を元に、法定雇用率を達成している企業に対しては、調整金、報奨金を支給することになっています。
このように民間企業には、かなり厳しい納付金制度が課せられていますので、各社、障害者雇用に取り組む努力をしています。
これが、今回ニュースになっているように民間企業を先導して取り組まなくてはならない立場の、国や地方公共団体が障害者雇用率を水増ししていたとなると・・・
やりきれない気持ちになったニュースです。
埼玉県川越市で開業している「あなたの、はた「楽」をサポート」する社会保険労務士です。
元リケジョであり、IT業界から社会保険労務士に転身した、ちょっと異色の経歴をもつ社労士です。
プライベートでは3男児の母になり、会社員時代に産休・育休・時短勤務も身をもって経験済。市内保育園に10年以上お世話になっています・・・
働く時間は人生の3分の1ともいわれます。
社長さんも従業員さんも、働くすべての人に楽しい仕事人生を送ってほしいという思いから、社会保険労務士になりました。
現在は社労士業である労務管理と合わせて、人事制度・賃金制度を中心とした制度作り、採用育成に関するコンサルティングを行っています。
中小企業の身近なアドバイザーとして、よりよい職場づくりを応援しています。