「人を雇用する中小企業の経営者様」に知ってただきたい労働・社会保険法に関する情報を、ブログでお伝えしています。
おひさま社会保険労務士事務所代表の篠田 恭子です。
本日はニュースの話題から。
自動販売機運営大手「ジャパンビバレッジ」の支店長が、2年前、部下にメールで「有給チャンス」というクイズを出し、全問正解できなかった場合は有給休暇を取得させなかった、という問題が物議をかもして話題になっています。
常識的に考えても許される内容ではないと、多くの人が感じるところだと思いますが、念のため有給休暇について書かれている労働基準法の規定に触れたいと思います。
労働基準法 第39条 年次有給休暇
- 使用者は、その雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
- 使用者は、1年6か月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して6か月を超えて継続勤務する日(以下「6か月経過日」という。)から起算した継続勤務年数1年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる6か月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を6か月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の8割未満である者に対しては、当該初日以後の1年間においては有給休暇を与えることを要しない。
条文だと、少し表現が難しいのですが、要は下記の表のようになります。
勤続年数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
有給取得日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
ここで言いたいことは有給休暇の取得は継続して勤務し、8割以上出勤していれば当然に発生するのです。
有給休暇は労働者の権利ですから、条件を満たす労働者には事業主は有給休暇を当然に与えなければならないわけです。
経営者側からすると頭が痛いところかもしれませんが、このような労働者の権利があることを前提に、人材採用や業務量をコントロールしていかなくてはならないと思います。
支店長1人の責任なのか?
労働組合は「有休取得は労働者の当然の権利だ」として同社に労働環境の改善を要求したことから、今回大きなニュースになっているようですが。
既に2年は経過しているわけで、その間、会社はどうしていたのでしょうか?知らなかったのか、知っていて何もしなかったのか?
この支店だけ極端に有給取得率が低いというようなことがなかったのだろうか?
いろいろと考えてしまいます。
このような理不尽なメールを支店長という立場の方が送信したときに、周りが正すことができないような過酷な労働環境、職場の雰囲気があったのだろうなぁ。
それに、このようなパワハラ行為があったにもかかわらず、社内で対処できていないということ。社内のパワハラ相談窓口は、機能していなかったのでしょうか。
あと、もうひとつは、責任はどこにあるのか。
下記は株式会社ジャパンビバレッジホールディングスの謝罪の文章です。
当該社員へのヒアリングを含めた調査を実施し、問題のメールについて事実確認を行いました。
その結果、当人が 2016 年頃メールを送付した事実および内容について概ね認めたため、厳重注意を行うとともに、今後、会社規程にのっとり適切に処分いたします。
なお、有給休暇の取得について、繁忙期には取得時期の調整を行うことがありますが、報道にあるような、クイズに正解しなければ有給休暇の取得ができないといった制度はございません。
この回答を読む限りでは、この支店長が1人でやったことであり、支店長1人の責任である。会社として適切に処分するという内容に読めます。
もちろん、支店長という立場にある人間がこのようなメールを送ること自体問題があります。
ですが、少なくとも会社が支店長という立場である人間に「労務管理をきちんと指導していない」という点は、会社に責任があるはずです。
「労務環境の改善に取り組んでいる」と最後のほうに書かれているのですが、会社として本気で労務管理に取り組んでいるのか、疑問を感じてしまうところです。
埼玉県川越市で開業している「あなたの、はた「楽」をサポート」する社会保険労務士です。
元リケジョであり、IT業界から社会保険労務士に転身した、ちょっと異色の経歴をもつ社労士です。
プライベートでは3男児の母になり、会社員時代に産休・育休・時短勤務も身をもって経験済。市内保育園に10年以上お世話になっています・・・
働く時間は人生の3分の1ともいわれます。
社長さんも従業員さんも、働くすべての人に楽しい仕事人生を送ってほしいという思いから、社会保険労務士になりました。
現在は社労士業である労務管理と合わせて、人事制度・賃金制度を中心とした制度作り、採用育成に関するコンサルティングを行っています。
中小企業の身近なアドバイザーとして、よりよい職場づくりを応援しています。