「人を雇用する中小企業の経営者様」に知ってただきたい労働・社会保険法に関する情報を、ブログでお伝えしています。
「あなたの、はた「楽」をサポート」、おひさま社会保険労務士事務所代表の篠田 恭子です。
突然ですが、貴社では、出勤簿をつけていますでしょうか?
労働基準法で定めがありますが、会社は3つの帳簿をそろえなくてはいけないことになっています。
よく、「法定3帳簿」といわれるものです。
3つの帳簿のうち、1つが出勤簿です。
(他に、労働者名簿・賃金台帳があります。)
法定3帳簿については、
過去の記事で触れている記事がありますので、よろしければ合わせてお読みください。
今回は「出勤簿」について、少し考えてみたいと思います。
出勤簿はありますか?
と社長さんにおうかがいしますと、こんな返事が返ってくることがあります。
「うちは全員営業職で直行直帰が多いから、出勤簿はつけていないんです。」
「うちは、全員働く時間が決まっているし、残業はないんですよ。そもそも出勤簿なんて、つける必要がないんです。」
だから、出勤簿なんていらないですよ。
給料は残業代を含んでいると伝えているし、まったく問題ないですよ・・・
なんていわれてしまうことがあります。
このように、そもそも出勤簿はありません、つける必要がありませんよね、という会社様。
これは、まず、法定3帳簿をそろえていない時点で違反です。
さらに非常に心配なことは、給与が適正に支払われていない、正しい給与計算ができていない可能性が、きわめて高いという点になります。
例えば、1日8時間以上勤務していた場合は、時間外手当が発生するはずなのですが
労働時間を把握していないのであれば、時間外手当が発生するかどうか、わからないですものね・・・
日曜日が法定休日の場合は、日曜日に出勤すると時給×1.35倍になるわけですが、そこも不明です。
こういう会社様の給与明細や賃金台帳を見せていただくと、ほとんどが基本給〇万円のみ、というものになっています。
いくら従業員に残業代を含めて払っているといっても、通じないでしょう。
残業手当を支払っていないということになりますので、早急に改善が必要になるでしょうし、
過去にさかのぼって、残業代の支払いが必要になる可能性もあります。
「管理監督者なので、出勤簿はつけていないです」
他の社員は付けているけれども、管理監督者の社員については、出勤簿はつけていないという会社。
2019年4月の労働安全衛生法の改正で、健康管理の点から
管理監督者等についても労働時間の状況を把握することが義務付けられることになりました。
そのため、管理監督者についても、労働時間の把握が必要なので、出勤簿はつけていただく必要があります。
管理監督者は、労働基準法の労働時間,休憩時間及び休日に関する規定の適用除外となりますので、残業代の支払いはいりません。
ただし、22:00-5:00の深夜労働については、深夜労働の割増賃金が必要となります。
この点を考えても、労働時間の把握は必要でしょう。
出勤簿はあります!という会社様、出勤簿を見せていただくと、こういう会社さんがあります。
「来た日だけの出勤簿を付けている会社」
出勤簿がカレンダーのようになっていて、出勤した日にハンコを押すタイプの出勤簿を使っている会社様があります。
このタイプの出勤簿は、出勤した日、お休みだった日はわかりますが、
いつ来ていつ帰ったか、いつ休憩してどれくらい残業したかはわからないタイプの出勤簿です。
他にも出勤簿を見せていただいたり、実際に話を聞くのは
「タイムカードはあるが、社員がきちんと打刻できていない日が多々ある」
「手書き(EXCEL)の出勤簿で、嘘を書いている」
「手書き(EXCEL)の出勤簿で、1日ごとに書かずに、数日分まとめて書いている」
というような話です。
これらは出勤簿があるといっても、残念ながら、きちんと労働時間を管理できているとは言えないと思います。
厚生労働省の、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインの中で
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置として、下記の内容の記載があります。
始業・終業時刻の確認・記録
使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。
会社側には、従業員の始業・終業時刻、労働時間(休憩時間)を把握する責務があるのです。
ですので、始業・終業時刻がわからないような出勤簿は、時間がわかるものに、変更していただいたほうがいいでしょう。
そして、労働時間の把握方法も労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインの中で
このように書かれています。
始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
これらの方法によらず自己申告とする場合は、適切な時間把握を行うよう十分な説明と、客観的記録から実態と申告が乖離する場合は実態調査が義務付けられます。
出勤簿は、健康管理の点からいっても、正しい給与計算をするうえでも非常に大切な書類になります。
おろそかにせず、きちんと作成するように変えていきましょう。
社員かきちんと打刻をしない
出勤簿に嘘を書く
ということについては、
・使用者が自ら現認して確認する
・従業員さんへの教育の徹底
・出勤状況がリアルタイムに把握できる勤怠管理システムの導入
についても、ご検討いただいたほうがいいと思います。
しのだ
埼玉県川越市で開業している「あなたの、はた「楽」をサポート」する社会保険労務士です。
元リケジョであり、IT業界から社会保険労務士に転身した、ちょっと異色の経歴をもつ社労士です。
プライベートでは3男児の母になり、会社員時代に産休・育休・時短勤務も身をもって経験済。市内保育園に10年以上お世話になっています・・・
働く時間は人生の3分の1ともいわれます。
社長さんも従業員さんも、働くすべての人に楽しい仕事人生を送ってほしいという思いから、社会保険労務士になりました。
現在は社労士業である労務管理と合わせて、人事制度・賃金制度を中心とした制度作り、採用育成に関するコンサルティングを行っています。
中小企業の身近なアドバイザーとして、よりよい職場づくりを応援しています。