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労働基準法が成立するまで

みなさま、こんにちは。

社会保険労務士は大きく分けると労務と年金のお仕事がありますが、労務の関係でいえば、もっとも身近な法律が労働基準法だと思います。

今回は私も勉強を兼ねまして「労働基準法が成立するまで」について話題にしてみたいと思います。

 

労働者を保護する法律は、労働基準法が最初・・・ではありません。

1911年(明治44年)に交付、1911年に施行した「工場法」という法律が、日本で初めて労働者保護法だそうです。

そのころの話は、みなさまも映画やテレビなどでご覧になっていると思いますが、

人を人として扱わないような、劣悪で悲惨な労働環境で、深刻な健康問題となっていたそうです。

私の場合は社会の授業だったかな・・・、学生時代に見た『あゝ野麦峠』の映画の衝撃が今も心に残っています。

工場法は、この映画にも出てくるような女工さん、子供たち(年少者)を保護するために作られた法律だそうです。

 

工場法の主な内容は

・年少者と女性労働者の就業の制限

・業務上の事故に対する雇用者の扶助義務

となっています。

年少者の就業制限は、12歳未満の就業禁止12時間を超える就業の禁止でした。

適用対象も全ての工場ではなく、「常時15人以上の労働者が使用されている」工場に限られていました。

 

現在の労働基準法に比べるとかなり限定的ですし、労働者保護を図る法律としては足りないと思いますが、

この限定的な内容でも交付まで、なんと30年、施工までさらに5年とかかったとのことです。

当時いかに、労働者保護という概念がなかったか、使用者が強かったかを感じます。

 

工場法は労働基準法ができたことによって廃止となりました。

 

変わって今の労働基準法は、

日本国憲法で定められている、ある条文を受けて作られました。

少し話題がそれますが、覚えていますでしょうか?国民の三大権利と、三大義務。

三大権利

  1. 生存権
  2. 教育を受ける権利
  3. 参政権

三大義務

  1. 納税の義務
  2. 勤労の義務
  3. 教育を受けさせる義務

ここで出てきました三大義務の1つ、「勤労の義務」については日本国憲法 第27条で

1.すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
2.賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3.児童は、これを酷使してはならない。

と記されています。

2項に、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める

とありますが、ここでやっとでてきますね。この2項を受けて労働基準法が施行されたそうです。

日本国憲法は、1946年11月3日に公布され、その6か月後の1947年5月3日に施行。

労働基準法は、日本国憲法の第27条を受け、1947年4月7日に公布され、1947年9月1日に大部分の規定が施行、11月1日には残りの部分が施行されています。


労働基準法

第1条  労働条件の原則

  1. 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
  2. この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

上記が第1条です。

労働基準法を一言で言うなら、労働時間、休日、賃金など、労働条件の最低基準が定められている、「労働者のため」の「保護法」です。

工場法と違って、基本的にはすべての事業所・労働者に法律が適用となっています。

ただし、「適用除外」ということで、下記の場合は、労働基準法が適用になりません。


同居の親族のみを使用する事業(家族経営の会社)

家事使用人

船員

一般職の国家公務員

 

同居の親族のみを使用する事業(家族経営の会社)

家族の私生活と仕事との区別があいまいで、労働時間等の規制をすることが難しいから

 

家事使用人

家事労働は私生活と密着していて、個々の家庭に応じて様々な内容であるので、労働基準法で規制することが難しいということから

 

船員

船員法で規定される船員は、船員法の規定が適用となるため

一般職の国家公務員

国家公務員法の規定が優先されるため。

ただし、行政執行法人の職員については適用になります。

地方公務員については原則として労働基準法が適用になりますが、変形労働時間制(1か月単位の変形労働時間制を除く)やみなし労働時間制など、適用されない条文があります。


最後に、1つ条文をご紹介します。

労働基準法 第2条 労働条件の決定
  1. 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

この条文は訓示的な規定のため、守らなかったからと言って罰則の適用はありません。

使用者と労働者が対等の立場で、と明記されたことは、当時としてはかなり画期的な内容であっただろうと思います。

改めて労働基準法に触れてみますと、いろいろと考えさせられることが多くあります。

 

労働基準法の施行から70年が経過し、時間外労働の上限規制をはじめとする働き方改革関連で、労働基準法の改正が早ければ2019年4月に施行される見込みです。

これも、今の労働基準法からすると、かなり画期的な内容、そして批判が多くあつまっている部分もあります。

どうなっていくのか、社労士として何ができるかを考えながら、今後の動向を見守っていきたいと思っています。

改正内容については、また、別の記事で触れられたらと思います。

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